皆さんは配管のねじ接続には、テーパーねじと平行ねじの2種類があることを知っていましたか?
それは知っていても、入社当時の私のように、以下のような方も多いのではないでしょうか?

テーパーねじと平行ねじって何が違うの?

配管図面や配管部品のカタログを見てもテーパーねじか平行ねじか判別できない
テーパーねじと平行ねじは配管を勉強する上で基礎中の基礎であり、継手やバルブといった他の配管部品でも関わってくる必須知識になります。
本記事では、そんな配管のテーパーねじと平行ねじの違いが分かるよう、テーパーねじと平行ねじの形状と役割をそれぞれ解説します。
また、図面やカタログでテーパーねじと平行ねじを見分けられるように、両者の表記方法についても解説します。
この記事で分かること
- 配管のテーパーねじと平行ねじの形状と役割がそれぞれ分かる
- 配管のテーパーねじと平行ねじの図面やカタログにおける表記方法が分かる
そして、
- 配管のテーパーねじと平行ねじの違いが分かる
- 図面やカタログの表記をみて、配管部品のねじがテーパーねじか平行ねじか見分けられるようになる
その結果、
継手やバルブといったそのほかの配管部品への理解が深まる。
(テーパーねじと平行ねじを理解することは配管を理解する上で必須!)

文系出身で現在プラントエンジニアリング業界に従事するTKが、自身の経験を踏まえてわかりやすく解説しますので、ぜひ一緒に学んでいきましょう!!
配管について知識ゼロという方は、最初に『必須知識』全く知らない人向け!配管の全体像を知るための基礎知識をご覧ください!
また、配管の接続方法を知らないという方は、『必須知識』配管の接続方法を解説!ネジ接続・溶接接続・フランジ接続とは?もご覧ください!
ねじ規格のおさらい
テーパーねじと平行ねじを解説する前に、ねじの規格についておさらいします。
いやいや早くテーパーねじと平行ねじについて教えろや!!
と思った皆さん、少しだけお待ちください笑
皆さんの知識の整理に役立つ内容かつ、絶対押さえておいてほしい内容ですので、是非とも目を通していただきたいです!
日本のねじ規格
皆さんは、日本では以下のねじ規格が使われているということを知っていましたか?

知らなかったという方、ご安心ください!すべて覚えておく必要はありません!
皆さんがこの中で覚えておくべきなのは、「メートルねじ規格」と「管用ねじ規格」です。
「メートルねじ規格」←最も身近なねじ規格
- ボルトやナットのねじ規格
- 日本中のほとんどボルト、ナットはメートルねじ規格で製作されている
- メートルねじ規格は「M20×50Ls」や「M10」のようにサイズ表記の先頭に「M」がつく
(↑このサイズ表記は皆さんも見たことがあるんじゃないでしょうか?!)
「管用ねじ規格」←本記事の主役
- 配管を接続するためのねじ規格
- 管用ねじ規格には「管用テーパーねじ」と「管用平行ねじ」の2種類がある
そして、ここまでで皆さんに理解しておいてほしいのは下記2点です。
- 「配管のテーパーねじと平行ねじ」=「管用ねじ規格の管用テーパーねじと管用平行ねじ」であるということ
- ボルトやナットのねじと配管のねじは規格が異なるということ
メートルねじ規格については、こちらの記事で詳しく解説しています!
『必須知識』知らなきゃ買えない!ボルト・ナット・ワッシャーの種類、材質、サイズ(規格)の話!
ねじ規格の大前提
ボルト・ナットと配管のねじは規格が異なることを分かったところで、ここからはねじ規格の大前提を説明します。そしてこの内容が絶対押さえておいてほしい内容になります。
ねじ規格の大前提:
異なる規格・種類のねじは一緒に使えない
どういうことか?例を使って説明します。
例1:配管の雄ネジにナットをねじ込むことはできない
(管用ネジ規格のねじとメートルねじ規格のねじは規格が異なるため、一緒に使えない)

例2:配管の雌ネジ(管用ねじ規格)にボルト(メートルねじ規格)をねじ込むことはできない。
(管用ねじ規格のネジとメートルねじ規格のネジは規格が異なるため、一緒に使えない)

例3:継手の雌ネジ(管用テーパーねじ)に圧力計に切ってある雄ネジ(管用平行ねじ)をねじ込むことはできない。
(管用テーパーねじと管用平行ねじは種類が異なるため一緒に使えない)


私自身、この大前提を知らず、例1と例2は可能だと思い込んでおり、恥ずかしい思いをしました笑
皆さんは恥ずかしい思いをしないよう、この大前提をしっかり覚えておきましょう!
管用テーパーねじ
ではここから本題となる管用テーパーねじと管用平行ねじを解説していきます!
まずは、管用テーパーねじです。
管用テーパーねじの 形状
下図のように端に行くにしたがってネジの直径が細くなっていく形状。
管用テーパーねじの 役割
配管内を通る流体が漏れでてこないよう耐密性(液体や気体が漏れない性質)を持たせた接続とする役割。ネジがテーパー形状のため、締めこんでいくと途中で止まり、密閉できる仕組み。

管用テーパーねじの 接続方法
管用テーパーねじをねじ込むときは、雄ネジ側にシールテープなどのシール材を施工してねじ込む。


ネジがテーパー形状となっているため、密閉しやすい構造にはなっていますが、そのままねじ込んでも漏れます。それは、ネジ山の寸法にどうしても誤差が発生し、完全に隙間がゼロにはならないためです。シール材はネジ山の誤差を吸収するためのモノというイメージです。
管用平行ねじ
続いて、管用平行ねじについて解説します。
管用平行ねじの 形状
図のようにネジの直径は一定で、配管の軸に対して平行になっている形状
管用テーパーねじの 役割
配管のネジ接続部を機械的に強固な結合とする役割。ネジが平行なため、テーパーねじのように途中でねじ込めなくなることは無く、最後までねじ込むことが可能。その分テーパーねじよりもネジ山が嚙み合っているため、より強固な結合となる。

管用平行ねじの 接続方法
管用平行ねじはガスケットを間に挟んでねじ込む。

管用平行ねじは機械的に強固な結合を目的としていますが、配管である以上、流体を漏らしていけません。しかし、管用平行ねじは管用テーパーねじのように耐密性を持たせる形状にはなっていないため、雄ネジ側にシール材を施工しても漏れます。そのため、必ずガスケットが必要となります。
管用テーパーネジと管用平行ネジの表記方法
続いて管用テーパーねじと管用平行ねじの表記方法を解説します。
これを覚えておけば、皆さんが配管図面や配管部品のカタログを見たときに、管用テーパーねじか管用平行ねじか見分けることができるようになります。
管用テーパーねじと管用平行ねじは以下のように表記します。
- 管用テーパーねじ(雄ネジ): R+呼び径B
例:「R1/4の継手」←8A(1/4B)の管用テーパー雄ねじの継手 という意味。

- 管用テーパーねじ(雌ネジ): Rc+呼び径B
例:「Rc1/4のバルブ」←8A(1/4B)の管用テーパー雌ネジのバルブ という意味。

ここで注意です!
管用テーパーねじは「R」「Rc」の代わりに、雄ネジ雌ネジ共通で旧呼称の「PT」と表記されることがあります。(例えば、PT1/4など)
結構、テーパーねじのバルブや継手に「PT」と表記されているため、なんだこれ?とならないよう、覚えておきましょう!
- 管用平行ねじ(雄ネジ・雌ネジ共通): G+呼び径B
例:「G3/8の圧力計」←10A(3/8B)の管用平行ねじが切られた圧力計 という意味。

管用平行ネジは雄ねじ雌ねじ区別されておらずどちらもGで表記します。
ただし、図面やカタログには形状も示されているため、オスメスどちらか判別できないということはないのでご安心ください笑
発展知識:海外の主な管用ネジ規格と互換性
ここでは、発展知識として海外の主な管用ねじ規格とそれぞれの互換性(一緒に使えるか?)を解説していきます。
ただしこの内容は、必ず覚えておく必要はないので、さらっと見てもらえれば大丈夫です!
海外の主な管用ねじ規格
アメリカ
一般用米国管用テーパねじ
- 米国規格の管用テーパーねじ
- 表記はNPT
- 日本の管用テーパーねじとはネジ山の角度が違うため互換性無し
一般用米国管用平行ねじ
- 米国規格の管用平行ねじ
- 表記はNPS
- 日本の管用平行ねじとはネジ山の角度が違うため互換性無し
ドライシール米国管用テーパねじ
- 米国規格の管用テーパーねじ
- シール材無しでも耐密性を持つよう設計されたねじ
- 特殊な設計のため、もちろん日本の管用テーパーねじとは互換性無し
イギリス
英国管用テーパねじ
- イギリス規格の管用テーパーねじ
- 表記はBSPT
- 日本の管用テーパーねじと互換性あり
英国管用平行ねじ
- イギリス規格の管用平行ねじ
- 表記はBSPP
- 日本の管用平行ねじと互換性あり
互換性については、以下の表にまとめましたのでご参照ください。


海外のねじ規格については、皆さんが働いている職場に合わせて、覚える覚えないを判断していただければと思います。
まとめ
今回は配管のテーパーねじと平行ねじの違いが分かるように、それぞれの形状と役割を解説しました。また、配管図面や配管部品のカタログでテーパーねじと平行ねじを見分けられるように、両者の表記方法についても解説しました。
✔ 本記事の振り返りポイント
〇ねじ規格について
- 「配管のテーパーねじと平行ねじ」=「管用ねじ規格の管用テーパーねじと管用平行ねじ」であるということ
- ボルトやナットのネジと配管のネジは規格が異なるということ
- ねじ規格の大前提:異なるねじ規格・種類のネジは一緒に使えない
〇管用テーパーねじ
- 端に行くにしたがってネジの直径が細くなっている形状
- 流体が漏れでてこないよう耐密性(液体や気体が漏れない性質)を持たせる役割
- 接続時、シールテープなどのシール材必須
〇管用平行ねじ
- ネジの直径は一定で、配管の軸に対して平行になっている形状
- 配管のネジ接続部において機械的に強固な結合とする役割。テーパーねじより強固な結合になる。
- 接続時、ガスケットが必須
〇管用テーパーねじと管用平行ねじの表記方法
- 管用テーパーねじ(雄ネジ):R(旧呼称PTの場合もあり)+呼び径B
- 管用テーパーねじ(雌ネジ):Rc(旧呼称PTの場合もあり)+呼び径B
- 管用平行ねじ(雄ネジ・雌ネジ共通):G+呼び径B
上記の内容を理解しておくことで、管用テーパーねじと管用平行ねじの違いと表記方法が分かるだけでなく、継手やバルブといったそのほかの配管部品への理解が深まる。というより、配管部品を理解する上で必須知識です。
そして今回の記事の内容を覚えた皆さんは、継手やバルブとといった配管部品を理解するための土台が完璧に出来上がっていますので、ぜひとも忘れないうち、継手やバルブについても学んでいきましょう!
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