
プラントエンジニアリングってプラントを作ることで合ってる??

プラントエンジニアリングは、誰が、どのように進めているのか、具体的によく分かっていない、、
皆さんは、上にある過去の私のように、
「プラントエンジニアリングが、具体的にどんなものなのかよく分かっていない」
という状態ではないでしょうか?
プラントエンジニアリングは、一言で言えば「プラントをつくること」ですが、実際には多くの企業が関わり、いくつもの工程が複雑に組み合わさっています。
そのため、初心者にとって、その全体像を理解するのは決して簡単ではありません。
しかし、プラントエンジニアリング業界で働く人にとって、自分の仕事がプラントエンジニアリングのどの部分を担っているのかを知り、広い視野を持って進めるためにも、全体像を理解することは非常に重要です。
そこで本記事では、プラントエンジニアリングの全体像を具体的に理解できるよう、プラントエンジニアリングの工程に関わる6種類の企業を紹介し、それらの企業がどのような役割を担い、どのように工程が進められていくのかを解説します。
この記事で分かること
- プラントエンジニアリングの工程に関わる6種類の企業が分かる
- プラントエンジニアリングの工程に6種類の企業がどのように関わり、工程がどのように進められていくかが分かる
そして、
- プラントエンジニアリングの全体像が具体的にイメージできるようになる。
- これから学んでいく内容や自身の仕事が、プラントエンジニアリングの工程のどの部分に当たるのかが分かり、知識が点ではなく、線でつながるようになる
その結果、
- 今後の学習効率や仕事の質が格段に高まり、プラントエンジニアリング業界で必須の基礎知識を最短距離で身につけることができるようになる

文系出身で現在プラントエンジニアリング業界で働く武将が、自身の経験を踏まえてわかりやすく解説しますので、ぜひ一緒に学んでいきましょう!!
プラントエンジニアリングとは?(定義)

まず、プラントエンジニアリングとは何か?を先にお伝えします。
顧客のニーズに応えるプラントを、EPC(設計・調達・建設)の工程を経て完成させ、納入すること。(納入後も運転や保全に携わることが多い)
なんだかよく分からないですよね。。
本記事では、皆さんが上記の定義を理解できるよう解説を進めていきますが、その前に、この定義の中の「EPC」という言葉について、簡単に説明しておきます。
「EPC」は、
- Engineering(設計)
- Procurement(調達)
- Construction(建設工事・試運転)
の頭文字をとっている言葉であり、プラントを完成させるために必要な3つの工程をまとめて表現したものです。
プラントエンジニアリングでは、この EPC(設計 → 調達 → 建設工事・試運転) の工程を経て、顧客のニーズに応えるプラントを作り上げていきます。

そのため、皆さんがプラントエンジニアリングとは何かを具体的に理解するためには、この「EPC」という工程を理解することが不可欠になります。
そこでここからは、皆さんがプラントエンジニアリングとは何か?を具体的に理解できるよう、以下の内容を解説していきます!
- プラントエンジニアリングの工程(EPC)に関わる6種類の企業
- プラントエンジニアリングの工程(EPC)に6種類の企業がどのように関わり、工程がどのように進められていくか

プラントエンジニアリングの工程(EPC)を理解しやすいよう、まずはその工程(EPC)に登場する6種類の企業を先に解説します!
「そもそも、プラントとは何か具体的によく分かっていない、、」という方は、
『必須知識』プラントとは?プラントの定義、役割、構造を解説!で詳しく解説していますので、まずはこちらからご覧ください!
プラントエンジニアリングの工程(EPC)に登場する6種類の企業

プラントエンジニアリングとは要するに「プラントを作って、納入すること」です。
しかし、言葉にすると簡単ですが、実際に取り組もうとするとそれは膨大な時間・資金・労力が必要となる大規模プロジェクトとなります。
なぜなら、プラントは通常、東京ドーム数十個から数百個分にも及ぶ広大な敷地に、多数の設備を設置し、一つの巨大な生産システムとして機能させる必要があるからです。
そのため、プロジェクト規模は数百億円から数千億円に達することも珍しくなく、プロジェクトの期間も3~5年に及ぶケースが一般的です。
さらに、プラントを完成させるには、プロセス(製品の製造工程に関すること)、機械、配管、電気、制御など、多岐にわたる専門知識と技術が不可欠になります。
そのため、プラントエンジニアリングを一つの企業だけで実現することは不可能であり、数多くの企業が役割を分担し、互いに協力することでプラントエンジニアリングは進められています。
プラントエンジニアリングは数多くの企業によって進められていますが、それらの企業は大きく分けると6種類に分類できます。

- 顧客
- エンジニアリング企業(EPC企業)
- 設備メーカー
- 機器・部品メーカー
- 工事業者
- 商社
これから、この6種類の企業について、それぞれの役割と具体例を順番に解説していきます。
顧客

説明
- プラントを買う企業(国や自治体の場合もあり)
- 完成後のプラントの所有者・運営者
- 顧客は、事業目的を達成するために、エンジニアリング企業へプラントを注文する
顧客の事業目的の例
顧客の具体例
- 電力・ガス分野:JERA、東京ガス、大阪ガス、電源開発(J-POWER)など
- 石油・化学・鉄鋼分野:ENEOS、三菱ケミカル、住友化学、信越化学、日本製鉄、JFEなど
- 医薬・食品分野:武田薬品工業、アステラス製薬、味の素、明治など
- ごみ処理・水道分野:官公庁、各自治体など
※海外の企業・組織の場合もある
エンジニアリング企業(EPC企業)

説明
- 顧客からプラントエンジニアリングの3つの工程(EPC)をすべて請け負い、プラントを完成させ、顧客に納入する企業
- 契約で定めた「納期」や「プラントの性能」などの約束を守って、顧客へプラントを納入することで、報酬を得ている
- 顧客とエンジニアリング企業の契約内容の例(超ざっくり)
- 「3年後までに、製品を月当たり〇〇トン生産できるプラントを作ってくれ。契約を守ってくれたら××百億円支払う」
- エンジニアリング企業は、報酬を得るためにも、プラントエンジニアリングの3つの工程(EPC)のすべてに責任を持ち、プロジェクトにかかわる多くの企業をまとめ上げながら、プラントを作り上げていく
→まさに、プロジェクトの指揮官的な存在
用語解説
- 「EPC事業」/「EPC企業」
プラントエンジニアリングの3工程(EPC)を一括で請け負う事業を「EPC事業」と呼び、それを行うエンジニアリング企業を「EPC企業」と呼びます。 - 「請け負う」
- 定義: 契約で定めた仕事内容や責任範囲を「完成させる」と約束し、引き受けること。
- 対価: その契約通りに遂行・完了させることで、初めて報酬を受け取る権利が発生します。
- 身近な例:住宅のリフォーム工事
工事業者が「キッチンの交換と壁紙の張替えを、1週間で行う」という契約を請け負った場合、期限内にその作業を不備なく完了させることで、契約書に記載された代金を受け取ることができます。エンジニアリング企業もこれと同じことを、より巨大な規模で行っています。
エンジニアリング企業の具体例
- 専業:日揮HD、千代田化工建設、東洋エンジニアリングなど
- 重工・鉄鋼系:日鉄エンジニアリング、JFEエンジニアリングなど
- 水・環境系:栗田工業、タクマなど
EPC事業のみを行っている企業を「専業」といい、上記の3社が「御三家」と言われています。
エンジニアリング企業は上記のように、日本国内に複数存在していますが、重工・鉄鋼系や水・環境系など得意分野が異なっており、住みわけがされているイメージです。
設備メーカー

説明
- プラントを構成する設備の内、特に専門性が求められる設備のEPCを請け負う企業
- プラントを構成する設備は基本的にエンジニアリング企業がEPCを行うが、一部の専門性が求められる設備は、その設備を得意とする設備メーカーがEPCを行う
- 設備メーカーは、顧客からではなくエンジニアリング企業から該当設備のEPCを請け負う
専門性が求められる設備の例:ガスタービン発電機、蒸気タービン、大型ボイラー、加熱炉など
設備メーカーの具体例
- 動力・発電設備:三菱重工業、川崎重工業、IHI、シーメンスなど
- 産業用炉・加熱炉: IHI、JFEエンジニアリングなど
- LNGタンク:IHI、川崎重工業、トーヨーカネツなど
※海外の設備メーカーも多数存在する
機器・部品メーカー

説明
- プラントの設備本体や設備に取り付けられる汎用的な機器や部品を実際に製造する企業
- エンジニアリング企業や設備メーカー、工事業者へ製品を納入するまでが役割となり、現地での建設工事には参加しない
- 製造する製品によって、さらに製缶・加工業者と汎用機器・部品メーカーに分けられる
製缶・加工業者
製缶・加工業者は、エンジニアリング企業や設備メーカーが設計した図面通りに設備本体や部品を製作する企業(←受託製造)
汎用機器・部品メーカー
バルブ、継手、計器類、モーターなど、自社であらかじめ型式が決まっている機器や部品を製造する企業
機器・部品メーカーの具体例
- 製缶・加工業者:地域の大手鉄工所(港湾エリアの〇〇鉄工、〇〇エンジニアリング、〇〇造機 といった名前の企業)
- 汎用機器・部品メーカー:キッツ (バルブ)、横河電機(計装機器)、アズビル(計装機器)三菱電機(電気部品)など
※海外の機器・部品メーカーも多数存在する
工事業者

説明
- プラント建設工事で実際に作業を行う企業
- エンジニアリング企業や設備メーカーからプラント建設工事を請け負い、作業を行う
- 工事業者によって専門分野が異なるため、一つのプラント建設工事の現場には、複数の工事業者が存在し、それぞれの専門分野の作業を行う
工事の例:土木工事、建築工事、機械器具設置工事、配管工事、電気工事、計装工事、塗装工事など
工事業者の具体例
- 機械器具設置・配管工事:山九、日鉄テックスエンジなど
- 電気工事:きんでん、関電工など
※海外の工事業者が作業する場合も多数存在する
商社

プラントエンジニリングにかかわる商社は大きく以下の2種類に分けられます。
- 総合商社
- 専門商社
総合商社の説明
- 世界中のネットワークを駆使して「○○という電力会社がが発電所(プラント)を作ろうとしている」という情報をキャッチし、エンジニアリング企業とタッグを組んで、顧客へプラント建設プロジェクトを提案する役割を果たす
- 顧客が高額なプラント建設プロジェクトに投資できるよう、銀行融資の手続きや調整も支援する
→まさに、プラント建設プロジェクトが生まれる段階でエンジニアリング企業の心強いパートナー
専門商社の説明
- 特定の資機材に精通し、多様なメーカーとのネットワークを駆使して、エンジニアリング企業や設備メーカーに対して、最適な機器・部品を選定・提案する役割を果たす
- 膨大な種類の機器・部品の中から最適なものを選び出すことは大変であるため、エンジニアリング企業や設備メーカーにとって専門商社は、調達業務を効率化し、企業の負担を軽減する役割を果たす
→エンジニアリング企業や設備メーカーの調達業務で大変助かる存在
商社の具体例
- 総合商社:三菱商事、三井物産、伊藤忠など
- 専門商社:西華産業、椿本興業、岡谷鋼機など
プラントエンジニアリングの工程(EPC)がどのように行われているか

プラントエンジニアリングにかかわる6種類の企業が大体分かったところで、ここからはプラントエンジニアリングの一連の工程(EPC)について解説していきます。
上述の通り、プラントはEPC(設計 → 調達 → 建設工事・試運転)の3つの工程を経て完成し、顧客へ納入されます。
ただし、EPCが始まる前の段階(プラント受注前)とEPCが終了した後の段階(プラント納入後)もプラントエンジニアリングにとって重要な工程となります。
そのため、ここからは、「EPCが始まる前」、「EPC(設計 → 調達 → 建設工事・試運転)」、「EPCが終了した後」が、具体的にどのように行われ、ここまで紹介した6種類の企業がそれぞれの工程にどのように関わっているのかを説明していきます。
ただし、事細かにすべて説明しているとかなり長くなってしまうため、要点を絞って解説していきます。

また、私が調達の仕事をやっている都合上、調達の内容が長文となってしまいました。。。
ご了承ください。
- EPCが始まる前(プラント受注前)
- E:Engineering(設計)
- P:Procurement(調達)
- C:Construction(建設工事・試運転)
- EPCが終了した後(プラント納入後)
EPCが始まる前(プラント受注前)
顧客による引き合い
まずスタートは、顧客が事業目的を達成するためにプラント建設を検討するところから始まります。
プラントは何百億~何千億円という投資が必要になるため、そんなに簡単に「プラント作ろう!」とはなりません。顧客は、そもそもプラント建設が可能か、そのプラントを建設して本当に利益が出るのかを確認します。
そこで顧客は、総合商社に声をかけ、「このくらいの納期で、こういう性能のプラントを作ってもらう場合の見積を出してほしい」と依頼します。
総合商社はこの案件に最適なエンジニアリング企業を選び、タッグを組んで顧客へ見積回答できるよう準備をします。(総合商社A×エンジニアリング企業α)
もちろん顧客はこの時、比較検討できるよう複数の総合商社(それぞれ特定のエンジニアリング企業とタッグを組んでいる)へ同じ内容の依頼をします。(総合商社B×エンジニアリング企業βや総合商社C×エンジニアリング企業γなど)
このように顧客から総合商社・エンジニアリング企業への依頼を「引き合い」といいます。

エンジニアリング企業による見積積算
エンジニアリング企業は顧客から引き合いを受けると、その内容をもとに簡単な設計を始め、プラント建設に必要な費用の積算を行います。
費用を積算するために、エンジニアリング企業は設備メーカーや機器・部品メーカー、工事業者に対して概算見積を依頼します。
- 「この設備のEPCを依頼したら、だいたいいくらでやってくれる?」
- 「この部品を〇百個注文した場合の納期と概算見積を教えて」
- 「この工事を依頼したらいくらかかる?」
エンジニアリング企業は各社から回答された概算見積を確認し、プラント建設に必要な総額を計算します。そしてプラント建設を請け負う場合の見積を決定し、顧客へ提出します。

プラント建設プロジェクトの受注
顧客は、複数の商社・エンジニアリング企業のタッグから届いた見積を確認し、
- そもそもプラント建設を行うかどうか?
- プラントを建設する場合、どの総合商社・エンジニアリング企業タッグに発注するか?
を決定します。
こうして、ある総合商社・エンジニアリング企業のタッグが無事にプラント建設プロジェクトを受注します。
ここまでがEPCが始まる前(受注前)の段階です。EPCが始まる前からすでに、6種類の企業が関わっています。

E:Engineering(設計)
ここからプラント建設プロジェクトが始まります。まずは、EPCのスタートである E:Engineering(設計) からです。
エンジニアリング企業による図面作成と顧客の承認
この工程では、エンジニアリング企業が顧客の要望に沿ったプラントを設計し、設計図を作成していきます。
図面にはネジ一本、配管一本まで記載されており、そのような図面を何千枚、何万枚という膨大な数作成します。
多数の図面の中でも、プラントエンジニアリングの根幹となる重要な図面については顧客に確認してもらい、承認を得ます。

購入仕様書の作成
また、図面とは別に購入仕様書も作成します(会社によって名称が異なる場合があります)。
設計を進める中で、プラントに必要な設備や機器・部品が明らかになってくるため、それらを調達するために作成される文書が購入仕様書です。
購入仕様書には、以下の内容が記載されています。
- 設備や機器・部品の性能
- 数量
- 納期
- 納入場所 など
エンジニアリング企業は次の調達工程で、この購入仕様書を設備メーカーや機器・部品メーカーに渡すことで、必要な設備や機器・部品の仕様を正しく伝えることができます。

P:Procurement(調達)
エンジニアリング企業の設計がある程度進み、購入仕様書も作成できたら、EPCの2番目の工程である調達が始まります。
エンジニアリング企業による設備メーカー、機器・部品メーカーへの引き合い・発注
エンジニアリング企業は作成した購入仕様書を設備メーカーや機器・部品メーカーに送り、必要な設備や機器・部品の仕様を正しく伝えます。
この時、エンジニアリング企業が専門商社へ購入仕様書を送り、最適な設備や機器・部品の選定を依頼する場合もあります。
設備メーカーや機器・部品メーカーは購入仕様書を受け取ると見積を作成し、エンジニアリング企業に提出します。
エンジニアリング企業は設備メーカーや機器・部品メーカーから提出された見積を確認し、品質・価格・納期を考慮して発注先を決定します。

設備メーカーによる設計と機器・部品メーカーへの引き合い・発注
発注された設備メーカーは基本的にEPCを請け負うため、設備の設計を開始し、設備の根幹となる部分の図面についてはエンジニアリング企業に確認してもらい、承認を得ます。
また、設備に必要となる機器や部品を調達するために購入仕様書を作成し、機器・部品メーカーに送ります。
その後、エンジニアリング企業と同様に機器・部品メーカーから見積を受け取り、発注先を決定します。


機器・部品メーカーによる製作と納期管理・品質管理
エンジニアリング企業や設備メーカーから発注された機器・部品メーカーは、指定された納期を守るために製品の製造を進めます。
エンジニアリング企業や設備メーカーは、その後の建設工事に間に合うように機器・部品メーカーの納期を管理するとともに、納入される機器や部品の品質も管理する必要があります。
そのため、エンジニアリング企業や設備メーカーは検査員を派遣し、工程の進捗を確認するとともに、製品の寸法検査や漏れ検査を行います。

現地への輸送を手配
こうして、機器・部品メーカーが製作する製品の品質と納期を管理し、設備や機器・部品が完成すると、エンジニアリング企業や設備メーカーは現地への輸送を手配します。
プラントの設備は巨大なものが多く、また現場が海外の場合もあるため、設備や機器・部品をいかに安く、安全に、適切なタイミングで現地まで運ぶかもプラントエンジニアリングにとって重要になります。

工事業者の選定と発注
さらに、この調達のタイミングでエンジニアリング企業や設備メーカーは、次の工程である建設工事・試運転を実際に行う工事業者も選定します。
設備や機器・部品と同様に、工事内容の詳細を伝え、工事業者から見積を受け取り、建設工事・試運転に必要な工事業者(土木、機械器具設置、配管、電気、計装など)へ工事を発注します。

C:Construction(建設工事・試運転)
プラント建設に必要な設備や機器・部品の調達が終わり、工事業者の選定も完了すると、いよいよプラントエンジニアリングの最終局面である建設工事・試運転が始まります。
建設工事
建設工事では、現地に実際にプラントを作り上げるために、土木工事、設備の据え付け工事、配線工事など、さまざまな工事が行われます。
そのため、現地で作業を行う工事業者の人数は何百人から何千人という規模になります。
これらの工事業者を現地で指揮するのがエンジニアリング企業の現場監督(SV、スーパーバイザーとも呼ばれる)で、工程管理や安全管理、現地でのトラブル対応を担います。
プラントを構成する設備の中で専門性が求められるものについては、設備メーカーがEPCを請け負っているため、設備メーカーが契約した工事業者を設備メーカーの現場監督が指揮します。
もちろん、設備メーカーの現場監督や工事業者もエンジニアリング企業の現場監督の指揮下にあります。
このように、エンジニアリング企業、設備メーカー、工事業者が協力して工事を進めることでプラント建設が完了します。

試運転
プラントの建設が完了した後は、プラントが正しく生産システムとして機能するかを確認する試運転が始まります。
試運転では、顧客が求める性能が確実に発揮されているかを確認するため、実際にプラントを稼働させます。
多くの場合、この試運転で何らかの不具合が発生するため、それを修正し、顧客が問題なくプラントを使用できる状態に整えます。
こうして無事に試運転が終わると、エンジニアリング企業は顧客へ建設したプラントを引き渡し、プラント建設プロジェクトは完了します。

EPCが終了した後(プラント納入後)
納入後のメンテナンスや増設・改造
EPC後は顧客がプラントを稼働させ、製品を製造する段階ですが、この段階でもプラントエンジニアリングはたびたび行われます。
なぜならプラントは多数の設備の集合体であるため、車と同様に定期的なメンテナンスが必要だからです。
定期的なメンテナンスを行わないと、プラントの生産効率が低下したり、場合によっては運転が停止してしまうこともあります。
その定期的なメンテナンスを請け負うのがエンジニアリング企業や設備メーカーです。
エンジニアリング企業や設備メーカーは、機器・部品メーカーから交換部品や予備品を調達して顧客に納入したり、工事業者を雇って現地で交換作業などを行います。
また、エンジニアリング企業はメンテナンス以外にも、顧客へプラントの増設や改造の提案を行い、新たなプロジェクトが始まる場合もあります。

以上のとおり、プラントエンジニアリングは、「EPCが始まる前」➡「EPC(設計、調達、建設工事試運転)」➡「EPCが終了した後(プラント納入後)」という流れで工程が進んでいきます。
どうでしょうか?プラントエンジニアリングが具体的にどのように行われ、6種類の企業がそれぞれの工程にどのように関わっているのかある程度、具体的に理解できたのではないでしょうか?
まとめ
今回は、プラントエンジニアリングの全体像を具体的に理解できるよう、プラントエンジニアリングの工程に関わる6種類の企業を紹介し、それぞれがどのような役割を担い、工程がどのように進められていくのかを解説してきました。
〇プラントエンジニアリングとは?(定義)
顧客のニーズに応えるプラントを、EPC(設計・調達・建設)の工程を経て完成させ、納入すること。(納入後も運転や保全に携わることが多い)
〇プラントエンジニアリングの工程(EPC)に登場する6種類の企業
①顧客
プラントを買う企業、完成後のプラントの所有者・運営者
②エンジニアリング企業(EPC企業)
プラントエンジニアリングの3つの工程(EPC)をすべて請け負い、プラントを完成させ、顧客に納入する企業
③設備メーカー
プラントを構成する設備の内、特に専門性が求められる設備のEPCを請け負う企業
④機器・部品メーカー
- 製缶・加工業者
エンジニアリング企業や設備メーカーが設計した図面通りに設備や部品を製作する企業(←受託製造) - 汎用機器・部品メーカー
バルブ、継手、計器類、モーターなど、自社であらかじめ型式が決まっている機器や部品を製造する企業
⑤工事業者
実際にプラント建設工事で作業を行う企業
⑥商社
- 総合商社
エンジニアリング企業とタッグを組んで、顧客へプラント建設プロジェクトを企画・提案する企業 - 専門商社
プラント設備をつくる際に欠かせない資機材を、エンジニアリング企業や設備メーカーが円滑に調達できるよう支援する企業
〇プラントエンジニアリングの工程(EPC)がどのように行われているか
- EPCが始まる前(プラント受注前)
- 引き合い→見積作成→受注
- E:Engineering(設計)
- 図面作成、顧客からの承認、購入仕様書作成
- P:Procurement(調達)
- プラント建設に必要な設備・機器・部品・工事業者を調達、現地運搬も手配
- C:Construction(建設工事・試運転)
- 工事業者により実際にプラントを建設→問題なく使用できる状態になるよう試運転
- EPCが終了した後(プラント納入後)
- 定期的なメンテナンス、必要に応じて改造や増設
上記の内容を理解しておくことで、プラントエンジニアリングの全体像が具体的にイメージできるようになります。そして、これから学んでいく内容や自身の仕事が、プラントエンジニアリングの工程のどの部分に当たるのかが分かり、知識が点ではなく、線でつながるようになります。
その結果、皆さんの今後の学習効率や仕事の質が格段に高まり、プラントエンジニアリング業界で必須の基礎知識を最短距離で身につけることができるようになります!
今後は、プラントエンジニアリングの各工程の詳細についても解説していきますので、ぜひ一緒に学んでいきましょう!

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